結晶形および結晶面

宝石品質ダイヤモンドの晶癖は八面体です。

鉱物結晶において、化学組成および内部結晶構造は基本的に全体を通じて等しくなります。

これと反対に岩石は通常独自の化学組成および結晶構造を持つ2種類以上の鉱物の結晶の集まりです。

簡単に言うと、結晶は単位格子(ユニットセル)と呼ばれる全く同じブロックが莫大な量が集まって構成した大きな形として描くことができます。

単位格子とは、独特の化学組成および鉱物の基本的結晶構造を兼ねそなえた原子最小の集まりです。

プロセスはおもちゃの積木を積み上げるのに似ていて、出来上がる形は使用するブロックの形ばかりでなく、いかに積み上げられるかにも左右されます(たとえば立方体、あるいは靴箱の形も作ることができます)。

同じ形状の単位格子で結晶形と呼ばれる様々な形状を作ることができます。

さらにおもちゃのブロックと異なり単位格子の積み重ね方は重力に制限されず、どの方向にも広がっていけるのです。

ある鉱物が最も多くとる外部結晶形状をその晶癖と呼びます。

宝石品質ダイヤモンドの晶癖は八面体、すなわち三角形の側面が8枚ある形です(側面が4枚ある四角錐2個の底と底を合わせたものに似ています)。

八面体およびこれと関連性があるほかの結晶形は特に標準ラウンドブリリアントのカッティングに適しています。

ダイヤモンドは立方晶系に結晶化するから立方体の宝石結晶を形成すると考えるひともいるでしょう。

理論的に可能ですがこれは非常に珍しくなります。

十二面体も含め、他の数多くの形状があります。

結晶体の話をしているとき意味するのは、結晶が常に理想的状態で成長した場合に形成される論理的、理想的形状のことです。

言うまでもなく、自然界では原石ダイヤモンド結晶の実際の形状は多種多様です。

どの鉱物においても理想的形状は稀となります。

その結果、このように完全に形成された結晶は宝石にカットされずにコレクターの試料として販売されることが多くなります。

理想的結晶形状の本当の重要性は、外観にかかわらずあらゆるダイヤモンドの内部に存在する原子配列を反映していることです。

さらにこの配列は固定された幾何学的関係で生じ、すべて単位格子の構造に固有のもので結晶全体にわたって一貫しています。

カッターはダイヤモンドのカッティングを計画する場合、これに影響されます。

カッターの立場から見ると、最も重要な理想的形状は立方体、八面体、および十二面体です。

結晶形と結晶面の違いを明らかにする必要があります。

特にカッターにとって、この違いは重要となります。

結晶面

ここまで、理想的な結晶形に関して幾何学的な固体として説明してきました。

ダイヤモンドのカッティングの仕組を把握するには、結晶形ではなく結晶面としてとらえ、平坦な板が結晶を様ざまな方向に走っているように考えたほうが役に立ちます。

たとえば、立方体面と言う場合、これは3対の潜在的立方体結晶面のうち1対に平行な面を意味します(潜在的、と言うのは実際に外部に立方体面のあるダイヤモンド結晶はほとんどありません、その外形にかかわらず、あらゆるダイヤモンドは内部に立方体面を有しているからです)。

立方体面は3組しかありません。

立方体には面が6面ありますがそれぞれもう1枚の面と平行だからです。

各組に、少なくとも理論的には原子層と同数の平行な面があります。

同様にあらゆるダイヤモンド結晶に八面体面が4組あよび十二面体面が6組ありますが、ここでも結晶外形は関係がありません。

面の各面において、いずれの面も他の組の面と明確な幾何学的関係があります。

すなわち、その相対的位置およびその間の角度は一定です。

カッターはこの結晶学的方向に制約を受けますが(通常、特定の作業には特定の面を使用します)これによって十分、確信して計画を立てることもできます。

これをすべて念頭におくとダイヤモンドの主要3結晶形がすべてよく分かるようになります。

立方体

立方体の形のブロックをどの方向にも均等に積み上げると、より大きい立方体形ができます。

宝石品質で立方体形のダイヤモンド結晶は極めて珍しく、一部の八面体結晶のように驚くほど結晶面が完璧な立方体結晶はありません。

しかしそれでもすべてのダイヤモンド結晶の中に原子の立方体面が潜在的に立方体結晶面に平行に存在しています。

八面体および十二面体の面と比較すると、立方体は中位の硬度です。

しかし他の面との関係から、内部の立方体面は大きい八面体および十二面体結晶を分割するのに最も有利な方向となることが多く、これによってカッターは原石からの十分な歩留りで標準ラウンドブリリアントにカットできるようソーイングできます。

八面体

立方体形のブロックを正方形に一層並べ、その上下にできます。

各層がその前の層より1列ずつ小さくなるよう正方形の層を積んでいくと八面体形ができます。

しかし、ダイヤモンドの単位格子の内部構造により、八面体ダイヤモンドの形状が成長する場合、正方形に層の方向が潜在的立方体形の正方形の層と方向が同じではなく、45度回転しています。

形成の完璧な八面体はあらゆる結晶の中でも特に印象的です。

この姿を思い描くには、立方体の内部にある八面体を想像してみます。

八面体の6頂点はそれぞれ立方体に各面の中央に接することになります。

逆に八面体の内部にある立方体を思い描くと、立方体の8コーナーはそれぞれ八面体の三角形の各面の中央に接することになります。

八面体は宝石品質ダイヤモンド結晶の形状(晶癖)中、最も一般的なのです。

形成の完全な八面体はグラシーと呼ばれ、あらゆる鉱物結晶の中でも特に印象的となります。

基本的八面体形が変形すると丸まった形ができ、これは標準ラウンドブリリアントのカッティングに特に適しています。

八面体の面はクリページ面でもあるので、ダイヤモンドのカッティングにおいても重要です。

カッターはクリページを利用して、ゆがんだダイヤモンド結晶をより作業しやすい形状へと分割したり、大きなインクルージョンを除去することによって、加工仕上げした宝石のクラリティを(したがって、価値も)向上させています。

十二面体

まず立方体のブロックで立方体を作り、次に6面の各立方体面にそれより小さい(しかし、なお正方形の)立方体の内部にある八面体を思い描きます。

八面体の各稜を切り取って4辺のダイヤモンド形(菱形)の面で置き換えると十二面体ができます。

(これらの新しい面はすべて相接し、したがって古い八面体の面と置き換わります。十二面体の内部では立方体面が四角錐を加える基礎となった立方体を作った時と同じ方向を向いています。)

宝石品質十二面体ダイヤモンド結晶が、非常に一般的な鉱床もありますが、これは明らかに結晶が形成された時の温度と圧力の組み合わせによるものとなります。

多くの科学者は十二面体を以前に形成されたほかの形状が条件の変化により部分的に溶融した結果生じたものと考えています。

平坦な結晶表面にある十二面体結晶は実際には知られておらず、大半は丸みをおびています。

八面体と同様十二面体やそれに関連する形状はラウンドブリリアントのカッティングに非常に適しています。

縦長の十二面体は、立方体より硬くなりますが、左右方向については、ダイヤモンドの最も柔らかい結晶方向と同じとなります。

最も柔らかい方向は研磨し易いので、カッターは研磨するとき、十二面体を使おうとします。

(すなわちカッターは、宝石の方向を見極め、十二面体を横に処理しようします。)

十二面体面は、代替ソーイング方向でもあるのです。

もし石がゆがんでいく立方体面のソーイング、もしくは八面体面のクリービングで重量ロスが大きくなりそうな場合、カッターは十二面体でソーイングできます。

最高の研磨は十二面体面に沿った研磨によって得られます。

十二面体面は、代替クリべージ方向でもありますが、この目的に使用されることはめったにありません。

ダイヤモンドの他の形状

二十四面体(テトラヘクサへドロン)は三角形の面が24あります。

これは各面を三角形の4つの面で置き換えた立方体として思い描くことができます。

宝石品質ダイヤモンド結晶では珍しい形状でもあります。

偏方多面体(トラペゾへドロン)には不等辺四辺形の面が24あります。

(これは平行な辺のない四辺形です。)

これは各面を四辺形の3つの面で置き換えた八面体として思い描くことができます。

宝石品質ダイヤモンドではこの結晶形状も珍しくなります。

二十四面体(トリスオクタヘドロン)にも三角形の面が24あります。

これは各面を三角形の3つの面で置き換えた八面体として思い描くことができます。

二十四面体(トリスオクタヘドロン)は宝石品質ダイヤモンド結晶、特に変形八面体では一般的な形状となります。

最後に四十八面体(ヘクスオクタへドロン)には三角形の面が48あります。

いくつかの変形が可能ですが、これは各面を三角形の6つの面で置き換えた八面体として思い描くことができます。

これは丸みのある結晶を生じる八面体の変形としては一般的となります(四十八面体のように面の多い形状は、度々ほぼ球形に見えます)。

組み合わせ、および変形

ダイヤモンド結晶は大抵2種類以上の基本的等軸晶系形状の組み合わせで生じます。

多くは変形した八面体となります。

特に一般的な組み合わせは八面体(オクタへドロン)と二十四面体(トリスオクタヘドロン)、八面体と四十八面体(ヘクスオクタへドロン)、および八面体と十二面体(ドデカへドロン)です。

平らになったり、細長い結晶も一般的です。

双晶

ひとつの鉱物試料が実際には内部で成長した2つ以上の結晶で構成され、個々の部分は同じ結晶形であるが方向は異なるという場合があります。

この試料を双晶と呼びます。

ダイヤモンド双晶にはいくつかの独特の種類があり、各々において2つの部分の結晶構造間に独特の角度関係があります。

明らかに最も重要な双晶の種類はマクルで、これは面体を1対の面に平行に分割して片方をもう一方にし60度もしくは180度回転させたものに似ています。

マクルは2つの理由からダイヤモンドカッターにとって問題となります。

第一に結晶構造の方向が結晶の一方と他方で反対になります。

すなわち、石全体で連続していないのでカッティング、もしくは研磨の最適方向を利用することが困難となります。

第二に大半のマクルの形状は高い歩留りをえることが困難です。

原石が一般に非常に薄いので、ラウンドブリリアントにカットしようとすると大量の重量を失うことになります。

マクルは一般にペアー、トライアングル(三角形)、もしくはハート等のファンシーシェープにカットされています。

集合体

集合体は多くの個々の結晶が内部で成長、もしくは天然の接着剤のように働く結合剤によって結合してできた固体です。

個々の結晶は肉眼で見えないこともあり、高い倍率では見えるものもあります。

個々の結晶の結晶構造の方向は互いに一定ではありません(双晶の明確な方向とは異なります)が、同一鉱物の個々の結晶の内部での原子パターンは等しくなります。

カーボネードやボード(単結晶のこともあります)はダイヤモンド集合体で、工業用研磨剤として使用されます。

ボードは通常、不透明ですが(大抵の顧客が知っているダイヤモンドとは全く似ていない)これをジュエリーにセットしているデザイナーもいます。

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