この天秤はシーソーのような働きをするもので、一方に重量のわからない物体を置き、他方に重量のわかっているおもりを置いて釣り合いをとります。
一番簡単な天秤は手で吊るすもので、金属型フレームでちょうつがい式に旋回する棹の両端から皿が吊り下がっています。
一方の皿に宝石を載せ、他方の皿におもりを載せます。
棹の中央にある針が釣り合いのとれた時を示し、宝石の重量がおもりの合計を合計重量と等しくなります。
経験を積めば、携帯用の天秤で約2分の1ポイント(0.005カラット)まで正確に宝石を測定できます。
これらの天秤も同じ様に作用しますが、石の重量を短時間でかつ正確に測定するという特徴があります。
一般的なものとしては、ライダー(可動分銅)天秤とチェーン天秤があります。
チェーンでポイント及び10分の1ポイントを量ることができます。
側面の下の方にあるディスク(円盤)でこれを調節します。
前面右上のカウンターは最高0.99カラットまで読み、その横に小さく表示された目盛りによって、1000分の1カラットまで測定できます。
右側の皿には大きな宝石を量るために、10カラットの倍数のおもりが置いてあります。
針は、支柱の底についた長方形の白い指針板上の平衡を示します。
さらに、カバーとスライド式ガラス戸によって天秤にすき間風があたるのを防ぎ、正面の黒いつまみは皿の制動装置を調節しています。
また、水準調整ねじが前の足に組み込まれています。
ライダー天秤は分銅が動かせるようになっており、その分銅が棹についている目盛りに乗ります。
1目盛りが常にポイントを測定します。
天秤の中には、1カラットから10カラットまで整数の目盛りのついたものもあります。
そうでない場合、整数カラットは右側の皿に置いたおもりで測定されます。
慎重に調整して読み取れば、約10分の1ポイント(0.001カラット)まで重量を補完することができます。
チェーン天秤は、ライダー目盛りか、おもりのいずれかで整数カラットを測定しますが、ポイントの測定には細かい金属製のチェーンを使用します。
ポインターが零点規正するまで、調節つまみを使ってチェーンを出し入れします。
多くのチェーン天秤にはポイントの目盛りがあり、バーニア(副尺)がついているので10分の1ポイントまで読み取れます。
ライダー天秤やチェーン天秤の場合、宝石の重量はライダーの分銅あるいはチェーンカウンターに、右側の上のおもりをプラスした合計値と等しくなります。
あわてて測定したり、計器に慣れない場合は、皿の上の重量を忘れることがあります。
これは人を困らせる上、非常に高くつく恐れがあります。
いずれの場合もナイフの刃先のように鋭い支点が上についている中央の支柱が天秤を支えています。
ポインターは指針板と呼ばれる目盛り全体にわたって振り動きます。
おもりが宝石の重量と等しい場合、ポインターはゼロを示します。
また、おもりが重すぎたり軽すぎたりするとポインターはどちらかのサイドを指し示します。
最も高性能な機械的天秤は皿が1つです。
調整つまみでレバーを動かして、計器の上部に収容されているおもりを上げ下げします。
機種によっては100分の1カラット単位、10分の1カラット単位、1カラット単位、そしてポイント単位に別々のつまみを備えているものもあります。
カウンターで合計重量を示し、バーンニア目盛りで10分の1ポイント(0.001カラット)まで読み取れます。
分銅を使った天秤のほかに、ねじり(ばね)秤や電子天秤もジュエリー業界で一般的に使われています。
ねじり秤について言うと、この秤は重量を示す目盛りかポインターにつながれたばねを引き伸ばします。
ブッチャー天秤、ポスタル天秤、バスルーム天秤などは、いずれもねじり天秤です。
もちろん宝石を重量測定する天秤は、はるかに正確です。
これらの天秤は迅速で使い方が簡単です。
機種によっては、宝石を皿の上に置いて回転目盛りから重量を読み取るだけのものもあります。
ジュエリーに用いられている最も高性能な天秤は電子式の天秤です。
測定台の上に何らかの圧力がかかると電気抵抗が生じ、それが重量に変わってデジタル表示されます。
最適条件化では、電子天秤は宝石の重量を10分の1ポイント(0.001カラット)まで何度でも正確に測定します。
選択しだいでカラット、ベニーウエイト、グラムも測定できる型もあります。
どんな種類の天秤でも経験を積んだ人が慎重に使えば、十分に正確、かつ一貫した結果を得ることができます。
ここで説明をした天秤は、いずれもダイヤモンド業界で使用されているものです。
携帯用天秤は持ち運びができるので応用範囲が最も広いのですが、これより大きく一層精巧な大抵の天秤より制度が低くなります。
ライダー天秤とチェーン天秤は非常に正確であるが、かなり高価である上、簡単に持ち運びできません。
皿が1つの天秤はさらに高価で、動かすのが困難です。
しかし、これらの天秤は分銅の重量や目盛りの値を加算せずに直接重量を読み取ることができるので非常に正確な上、作業が手早く簡単にできます。
ねじり秤は早くて使いやすく、安価ですが、ダイヤモンド用としては十分に正確とは言えません。
電子天秤は持ち運びができて迅速かつ使い方が簡単なう上、精度が高くて費用もそれほどかからないので、急速に普及しつつあります。
ダイヤモンド天秤を入手した場合は、使い方を練習して測定技術を研くとともに、種々の大きさのダイヤモンドの重量に慣れるとよいでしょう。
少し練習すれば、大抵の天秤は簡単に操作できます。
まずは製造者の取扱説明書に従うことです。
そうすれば、最高に正確な結果を得ることができますし、計器を最良の状態に維持できます。
いずれの天秤も、棹や皿に外部から圧力が加わるとそれに反応します。
最高の精度を得るには天秤の作動を妨げるもの、特に移動や振動、そして空気の流れから天秤を守る必要があります。
丈夫な机、あるいは作業台に天秤を据え付けましょう。
天秤によってはカバーが付いていて、それを閉じると空気の流れによってじゃまされずに測定を行う事ができます。
そのほか、天秤が完全に水平である事を示す装置が付いているものや、皿がからの場合に表示器がゼロを示すものもあります。
重要な安全機構は皿押さえです。
これは、天秤を使用あるいは移動する時に揺れて天秤を傷つけるのを防ぐ働きをします。
正確な重量測定は本領域の一部です。
様々な目的に対し、正確な寸法を測定することがもう一方です。
ダイヤモンドは非常に細かい公差まで測定されるので、寸法測定の場合も正確な計器を必要とします。