多くの消費者がダイヤモンドは無色だと思っていますが、その主な原因は小売店で売られているダイヤモンドのほとんどが無色に非常に近いものからイエローもしくはブラウンを帯びたもの(標準的範囲)に限られているためです。
しかし、ダイヤモンドは、虹のすべての色がそろっています。(本当は無色のものは極くわずかなのです。)
標準的範囲以外の明瞭な色合いを持つダイヤモンド(そしてイエロー、ブラウン、グレーでも十分美しいほど深い色のダイヤモンド)は、ファンシーカラーに分類されます。
ダイヤモンドは、いくつかの方法で着色処理することができます。
最も一般的な方法は放射線を使ったり(身につけるひとは全く安全)、放射線と熱を組み合わせたりしています。
これによって一般に色は永久的に変わります。
化学薬品やプラスチックの超薄膜でダイヤモンドをを部分的にコーティングすることによっても色を変えることができます。
昔、枠付きのダイヤモンドはフォイルバッグで色をつけたものがひんぱんにありました。
また、ごまかすのにインクのしみを意図的に作ったり、塗料や爪の光沢剤まで使われていました。
良心的な色処理の目的は一層、美しく売りやすい色を作り出すことですから、処理用に選ばれる色のほとんどは標準的色範囲の比較的暗い石となります。
ジェモロジストは、典型的な小売店に見られる宝石検査器具を使って着色処理を発見することもできますが、処理によっては器材を完全に備えた専門的な宝石鑑別研究室でしか見られない特殊な機器を必要とします。
カットダイヤモンドの色の量は石のサイズとカットの仕方、そして枠付きがどうかによって大きく左右されます。
グラスに入ったワインより瓶に入ったワインのほうが色濃く見えるのと同様、石が大きいほど色がはっきり見えます。
ペアー、ハート、マーキースといったファンシーカットの石の尖った部分は色が一層はっきり見えます。
枠の地金の色が色を隠したり反対に強調する場合もあります。
黄色い地金はブルーの石の色を殺してしまいますし、ややイエローやブラウンのダイヤモンドはより色が薄く見えますが、比較的濃いイエローやブラウンは一層、濃く深い色に見えます。
白い地金を使うとややイエローやブラウンの石はより濃く見えますが、ブルーの石の色は強調されます。
従って、枠付きのダイヤモンドは、裸石と同程度に厳密なカラーグレードを決定することはできません。
枠を顧客が選ぶ場合は、地金が石の外観に与える影響を考慮する必要があります。
ブルー、ピンク、レッドといった珍しいファンシーカラーを除いて、無色のダイヤモンドは最も高い値段がつけられています。(色のない方が価値の高い宝石はダイヤモンドだけです。)
標準的色範囲にあるダイヤモンドは、完全に無色にどこまで近いかによってグレードと評価が行われます。
色が無いほどグレードも値段も高くなります。
しかし、ファンシーカラーは色の深さと鮮やかさに基づいて評価されます。
色が明るくて純粋なほど価値が高くなります。
顧客の中には、色の濃い方が無色の石より暖かく、豪華に見えると言って実際に好む人もいます。
標準範囲内のカラーグレードの間の区別は非常に微妙なので、顧客がカラーグレードと価値の関係を見たり理解することは困難です。
2分の1カラット以下の枠付きダイヤモンドの場合、素人では上位5~6段階のグレードの色の違いを見分けるのはむずかしくなります。
訓練を積んだ専門家が行う区別は、明瞭な価格差、時には劇的な差となることもありますが、ほとんどの顧客の目には分かりません。
そうだとすれば、標準的色範囲のダイヤモンドを売るには2つの方法を用いることができることになります。
顧客の予算内でできる限り大きな石を買いたいと思っている場合は、カラーグレードがやや異なる2個の石を見せて、外観にはほとんど差のない点を指摘することができます。
顧客が差を見分けられなければ、グレードを犠牲にして顧客は見た目に大きいほうの石を買えます。
一方、品質を気にする顧客の場合は、色の違いはほんのわずかかもしれないが、専門家ならば見分けられる(ちょうど絵画の専門家が古い傑作の複製を見分けられるのと同様に)という点も指摘できます。
この違いがある限り、予算内の最高のものを欲する目の高い人もいるのです。