結晶構造

大半の鉱物は結晶質、すなわち原子が規則的な繰り返しのパターンで配列されています。

この内部配列を結晶構造もしくは結晶格子と呼びます。

この種の構造がない鉱物を非晶質と呼びます。

これは文字通り「無形」を意味します。

ガラスやプラスティックは非晶質物質です。

一部の鉱物学者およびジェモロジスト(GIA等)は鉱物結晶の分類に結晶系と呼ばれるカテゴリーを6種類用いています(7種類使用している人もいます)。

これは鉱物の結晶構造の対称性に基づくものです。

ダイヤモンドはアイソメトリック(等軸晶系)に分類されます。

等軸晶系鉱物には他にガーネット、スピエル、プラチナ、および金があります。

すべての結晶系の中で等軸系結晶が最も対称性の可能性が高くなります。

この名前自体が「寸法の等しい」を意味するギリシャ語に由来します。

形成の良好なダイヤモンド結晶を見れば、なぜこの名前が選ばれたか理解できます。

それは完全に平衡がとれているからです。

立法晶系とも呼ぶ「立方」と「等軸」は交換して使用できます。

実際「理想的」な形状のダイヤモンド結晶は立方体のスペースにぴったり合います。

しかし、実際に立方体の宝石品質ダイヤモンド結晶を見かけることはほとんどありません。

結晶構造は鉱物の特徴に大きな影響を及ぼします。

100万ドルのティアラにセットされたダイヤモンドと10セントの鉛筆の黒船は、全く同じ種類の原子でできています。

その違いは、内部の配列がごくわずかに異なるという事実によるものす。

結晶構造には他にもそれほど顕著ではありませんが重要な影響があります。

ダイヤモンド結晶の原子間の距離は方向によって異なります。

原子が密集している方向のほうが硬くなります。

これは重要な事実です。

これはある種のカラードストーンにもあてはまります。

カラードストーンでは硬度の差がダイヤモンドより大きくなりますが、ダイヤモンドは絶対的意味で極めて硬いので、方向による高度の問題はダイモンドのカッティングにおいて特に重要です。

他の宝石では細工人は常にその石より硬い研磨剤を使用することができます。

しかし、ダイヤモンドはこれより硬い物質がないので、カッターは高度の低い方向を利用してソーイングや研磨を行わなければなりません。

結晶構造は密度すなわち単位体積当たりの重量にも影響を与えます。

ダイヤモンド結晶中の炭素は黒鉛中の炭素より密集しているので、同じスペース当たりの数が多くなります。

その結果、ダイヤモンドは同じ大きさの黒鉛に対し、重量が約1.6倍となっています。

科学者は重量と体積のこの関係を比重(SG)と呼び、ある物体のSGを同体積の水の重量と比較して表現しています。

たとえば、SGが1.00立方メートルの物体は1.00立方メートルの水と全く同じ重量となります。

したがってSGは、ある体積の物質の重量とこれと同体積の水の重量との相対的な一定比となります。

宝石品質ダイヤモンドのSGは3.52で、これはダイヤモンドは同体積の水の3.52倍の重量を意味しています。

工業用ダイヤモンドの範囲は3.43まで下がります。

一般的なダイヤモンド類似石は、ほとんどがダイヤモンドより高いSGであるので、裸石のSGを測定するとそれがダイヤモンドか類似石か判定するのに役立ちます(枠付きでのSGは測定できません)。

ジュエリー業界でしばらく働けば、外観から予想できる重量より重いため自分で類似石を識別できるようになります。

非常にSGが高いので裸石を手のひらで重量感を調べるだけで識別できる類似石もあります。

結晶構造は当然、透明な結晶を透過する光の性質にも影響します。

ダイヤモンドや他の等軸鉱物結晶(および比晶質材)では、光線がいずれの方向に進んでも同じように伝播します。

これは単屈折もしくは等方性と呼ばれています。

これに対し、比等軸系結晶の場合、大抵の方向に進む光線は2本に分かれ、次に異なった速度で進み、それぞれの光波は互いに直角の方向に振動します。

これを複屈折もしくは異方性と呼びます。

単屈折性か複屈折性であるかの特性を光学特徴と呼びます。

ルビーやトルマリン等の複屈折の宝石には多色性のこともあります。

これは異なる平面を進む光は異なった吸収を受け、したがって方向によって異なった色が見えることを意味します(語源のギリシャ語は「多くの色の」を意味します)。

細工人はこのような石枠にセットした時に、最も魅力的な色もしくは色の混合が適切に見えるようカットしなくてはなりません。

多色性は、ダイヤモンドのカッティングにおいて問題とはなりません。

しかし、光学特徴により、単屈折のダイヤモンドをジルコン、カラーレスサファイア、あよび合成ルチル等の複屈折の類似石と識別するのに役立ちます。

ジルコンや合成ルチルを拡大して中を見ると大抵の方向でファセットの二重像が見えます。

ダブリングの強さは、物質および石の大きさに左右されます。

カラーレスサファイアはダブリングが非常に弱いので、石が大きくない限り10倍でも大抵の人にはほとんど見られません。

ジルコンは通常、非常に小さい石でも10倍で強いダブリングが見え、大きい合成ルチルでは拡大しなくてもダブリングが見えます。

結晶 INDEX: