販売している石の大半は、クラリティ特徴が肉眼では見えないか見えにくいので、何らかの拡大鏡が必要となります。
ジュエリー業界で最も多く使用されている器具は、双眼顕微鏡と10倍ルーペの2種類です(米国や大抵の国では、10倍がクラリティグレーディングの基準となっています)。
ルーペはダイヤモンドのグレーディングに適した拡大鏡の中では最も便利で安いものです。
これは基本的に高性能の虫眼鏡であり、小さく、携帯可能で、経験があれば非常に正確です。
しかし、ダイヤモンドをグレーディングするには、ルーペに球面収差及び色収差があってはなりません。
球面収差とは、レンズが同時に1平面上のあらゆる点に焦点を合わせられないことです。
安い虫眼鏡ではこのような事があります。
レンズ中央にある印刷物に焦点が合っていても縁がぼやけます。
これはレンズの湾曲によるもので、湾曲の異なるレンズを加える事で修正できます。
球面収差を補正したレンズを無収差レンズと呼びます。
色収差は分散によるもので、これにより光の様々な波長が僅かに異なった距離で焦点が合い、「色干渉縞」と呼ばれるものが生じます。
これは分散が反対で全波長の焦点を等距離で合わせる第2のレンズを加えることで修正できます。
色収差を補正したレンズは色消しレンズと呼ばれます。
両方のゆがみを補正したレンズは完全補正と呼ばれます。
レンズが3枚の場合はトリプレットと呼ばれています。
ルーペには3つのタイプのルーペ(ハンドルーペ、アイルーペと暗視野照明付ルーペ)を使います。
ハンドルーペには、柄を兼ねるカバーが付いています。
アイルーペは、旧式の片眼鏡のように眼嵩で支えるか、眼鏡に取り付けます。
これには、両手が自由になるという利点があります。
暗視野照明付ルーペは、顕微鏡の利点の一つである光源とルーペの便利さを兼ね備えています。
石を特殊な筒の中に置き、見るとき、拡散光が下から入り、暗い背景で見られます。
顕微鏡も基本的に単眼と双眼の2種類があります。
大抵の人には接眼レンズが1個しかない単眼顕微鏡がよく知られています。
これはジュエリー業界では滅多に使用されません。
像が逆になり、左のものが右に、下のものが上に見え、深さの感覚が無く、作業時に扱いにくいためです。
双眼顕微鏡には接眼レンズが2個あるので、三次元の立体的な像ができ、何かが表面上にあるのか、表面に近いのか、それとも石の内部にあるのか、比較的簡単にわかります。
像が逆さまになることもありません。
宝石グレーディング用の双眼顕微鏡は特殊な照明装置も付いており、10倍以上の拡大が可能で、これは特に宝石鑑別に役立ちます。
インクルージョンの正確な性質がクラリティグレードに影響を及ぼす場合にも、これはグレーディングに役立ちます。
しかし世界中の宝石専門、及び大半の業界機構や政府の規則は、グレーディングには10倍が最適であると考えています。
ルーペの主な長所は価格、及び軽便さです。
これに対し、顧客には顕微鏡の方が、はるかに容易に見せることができるという事実を考えると、グレーディングの補助ばかりでなく販売道具としての機能にも魅力が加わります。
1回の販売で、これに役立った顕微鏡の価格より高い収益をあげることもあります。
さらに、専門家の多くは、宝石用顕微鏡がグレーダー間の等質化に大きな役割を果たし、経験や視力の違いから生じるずれを無くすのに役立つと考えています。
大抵の人にとって顕微鏡は使用方法を学ぶのが簡単で、顧客にクラリティ特徴を示すためには確かにはるかに優れています。
度々顕微鏡は高いクラリティの石のグレーディングの時間の短縮と一貫性を持たせています。